新世紀エヴァンゲリオン 使徒とは?

使徒の目的と特徴

「新世紀エヴァンゲリオン」は「自分の不思議」と「世界の不思議」を内包した作品であり、その「謎」をミステリアスに彩るのが衒学的な用語の数々です。

「エヴァンゲリオン用語事典」も第2版が出る始末です。その中でもキリスト教、ユダヤ教に由来する用語の多さが目を引きます。

(「エヴァンゲリオン」からして「福音書」という意味ですし)

さて、「世界の不思議」の代表的なものが人類の敵であるとされる謎の存在「使徒」です。使徒の理解なくしてエヴァンゲリオンの世界観の理解はあり得ないと言っても過言ではありません。

キリストの弟子

まず「使徒」と聞いて連想するのはイエス・キリストの弟子である「12使徒」でしょう。

敵であるはずの存在を意識的にそのように呼んでいるのは、単に倒すべき敵ではなく、高貴な存在であるという暗示となっています。

テレビ版の「使徒」の英訳として「Angel」という語が使われているのもそれを物語る1つかもしれません。

以後、テレビ版を「TV版」、旧劇場版を「Air」、新劇場版はそれぞれ「序」「破」「Q」という略称で表記することにします。

使徒の目的とは?

さて、使徒は「自律型兵器」であるとされ、外部から指示などを受けることなく目的に向けて行動します。

その目的の多くはエヴァンゲリオンを作り出した「特務機関ネルフ」への侵入です。

ネルフ本部は第3新東京市の地下にある空洞「ジオフロント」にあり、重要な部分は更にその地下深くの「ターミナルドグマ」に位置します。

使徒はこの地下深くに侵入し、「あるもの」と接触するのが最終目的なのです。それは「リリス」と呼ばれる第2の使徒なのです。

御存知の通りこのアニメ、設定だけでも大変複雑なので最小限の事項に触れるにとどまりますが、「リリス」とは使徒を除く全ての生命の源たる存在です(「使徒」のほとんどは第1使徒「アダム」から生まれたとされます)

その魂は綾波レイに移され、肉体はネルフ最深部「ターミナルドグマ」で「ロンギヌスの槍」を突き刺された状態で磔になっている白い巨人なのです。

ネルフの一般職員はその存在すら知らず、使徒がこれと接触すると人類を滅ぼす「サードインパクト」が起きるというのはごく一部の人間しか知りません。

(しかし、ミサトやリツコにさえこの白い巨人は「アダム」であるという欺瞞情報が知らされていました。)

しばらく「休眠」していた使徒が活動を開始して次々と襲来することをかねてからゼーレは予想しており、実行組織たるネルフにエヴァンゲリオンを建造させ、使徒を迎え撃たせたというのがこのアニメの図式の一つです。

使徒の特徴は?

使徒の形状はさまざまですが、いくつかの共通点、特徴もあります。

まず、「波長パターン」をネルフのメインコンピューターたるMAGIシステムが「パターン青」と判断すれば、それがいかなる外見であっても「使徒」と判断され、「敵」とみなされます。

また、使徒には「コア」と呼ばれる赤い球状の物体があり、これを破壊されると他の部分が健在であっても活動を停止します。

(新劇場版ではコアを破壊されると「形象崩壊」を起こし、形を失って全て赤い液体となります。)

使徒が使うATフィールドとは

使徒は全て「ATフィールド」という防護壁を展開することができます。

この「ATフィールド」はいかなる通常兵器でも破ることは出来ず、これが同じくATフィールドを展開してこれを「中和」できるエヴァンゲリオンだけが使徒に対抗できる存在であるゆえんです。

(ATフィールドなしであっても、サキエル、イスラフェルには最大の威力を持つ「N2兵器」でも一時的な足止め程度にしかなりませんでした。)

体内には「S2機関」という一種の永久機関があり、これによって外部からのエネルギーの補給無しでも自律的に行動できるとされます。

エヴァンゲリオンにはこの機関がないために動力として外部電源が必要で、内臓電源に切り替えると活動時間が5分となってしまうのです。

更に、人間とは異質とはいえ「知性」を有し、学習することで新たな能力を獲得できるといった高度な自己変革能力も持っているのです。

「使徒」自体は襲来は必ず1体ずつですが、撃破された使徒からの情報の共有を匂わせる表現もあります。

使徒の名称は聖書の天使

TV版では襲来する使徒にユダヤ教やキリスト教の天使の名がつけられています。(「サンダルフォン」だけはイスラム教の天使由来です。)

その天使が守護するものは、使徒の特徴と結び付けられているのです。また、遺伝子の配列は人間と99.89%までも同じとされています。

ですから、番号でなく名前が出てくるものはTV版の呼び方です。ちなみに18番目の使徒は「リリン」と呼ばれますが、これは我々人間のことであり、「リリス」を祖としています。

対して進攻してくる使途は「アダム」を始祖としています。つまり、使徒対人間の戦いは、アダム型とリリス型、2つの使徒の地球上における生存をかけた戦いということになるのです。

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使徒を分類・ランキングづけすると?

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外部の形状で使徒を分類

第3使徒サキエル、第7使徒イスラフェル、第17使徒カヲル(タブリス)は比較的人間的なフォルムです。

また、人間以外の生き物を思わせる使徒も少なくありません。

第4使徒シャムシエル(タコイカ類?)、第6使徒ガギエル(深海魚)、第8使徒サンダルフォン(古代生物のアノマロカリスや魚のカレイ)、第9使徒マトリエル(ザトウムシが4本足になったような形状)、第15使徒アラエル(光る鳥を思わせるシルエット)という具合です。

抽象的・幾何学的な外観

第5使徒ラミエル(正八面体)、第10使徒サハクィエル(中央に目玉様のものを持ちます。

ミサトに「常識というものを知らないのかしら」と言わしめたサイケデリックなデザイン)、ウイルス状の群体であった第11使徒イロウル、空中に浮かぶ白黒の模様がついた球体状の第12使徒イロウル、DNAを思わせる二重らせん構造の円である第16使徒アルミサエルといったところです。

その他

生物ともなんとも言いがたいデザインのものもあります。はいだしょうこお姉さんが可愛い犬を描いたつもりが失敗した感じの第14使徒ゼルエル、ニワトリの頭部と脊髄に何か余計なものがついている「」の第3使徒、平成に生まれ変わった水飲み鳥といった風情の第7使徒などです。

また、第13使徒バルディエル、「Q」の第12使徒はエヴァンゲリオンが侵食されたために使徒となったもので、当初の外見は当然エヴァンゲリオンそのものです。

使徒にツッコミを入れてみる

さて、サードインパクトを起こすために真面目に(?)襲来している使徒の皆さんですが、少し考えると首をかしげたくなるものもあるので、少しツッコミを入れてみます。

目的がおかしいぞベスト2

第10使徒サハクィエルは物理的に、第11使徒イロウルはコンピュータのプログラムを通じて、手段は違えどネルフ本部をふっとばそうとした使徒です。

しかし君たちの目的はリリスとの接触であり、ふっ飛ばすことではないのでは?と思うのですが。その爆発にリリスが耐えうるのであれば、ネルフをふっ飛ばしてから次の使徒に目的の成就を託す、ということもできますが。

その後どうするつもりだったんだベスト3

第6使徒ガギエル、第8使徒サンダルフォン、「Q」の第7使徒を挙げておきます。これらはネルフから遠い場所で撃破されているせいもあり、その後どうやってネルフに侵入しようとするのか想像できません。

ガギエルは加持リョウジが持つ「アダム」狙いだった、とありますが、空に飛ばれてしまったらどうしようもなさそうです。

もしかしたらアダムを取り逃がした腹いせに国連艦隊を片っ端から沈めていたのかもしれません。

寂しかったのかいベスト3

第12使徒レリエル、第15使徒アラエル、第16使徒アルミサエル、これらの使徒は、直接ネルフへの侵入を図っていません。レリエルはシンジ、アラエルはアスカ、アルミサエルはレイにそれぞれ精神的な接触を図っています。

それが寝食だったり、攻撃だったりはしましたが、使徒が人の心に興味(?)を持ってきたことを示しているとも言えます。この後でカヲルがATフィールドが「心の障壁」であると言っていることにもつながっていくのです。

なお、第8使徒マトリエルには「最弱の使徒」の称号を贈りたいと思います。ネルフ本部の停電という事故がなかったら、溶解液を出さない横方向から攻撃されていとも簡単に撃破されていたでしょう。

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使徒の役割とは?

冒頭に描いたように「使徒」は「世界の不思議」の典型例です。

しかし、この作品では登場人物が変化していく契機をもたらす役割を果たしているという見方もできると思います。では、それはどういうことなのかを見ていきます。

第3使徒サキエル(「」の第4使徒に該当)は初号機を活動停止状態に追い込みますが、再起動した初号機に撃破されます(正確には圧倒されて追いつめられたサキエルが初号機を巻きこんで自爆)

エヴァが使徒を倒せることを実証した初の実例であり、碇シンジがエヴァに初めて乗ったケースになりました。父親に突如呼びつけられて突如訳のわからないものに乗って訳のわからないものと戦えと言われて、当然シンジは拒絶します。

しかし痛々しいレイの姿を見てエヴァに乗る決心をするのです。ここでシンジは「誰かの為に」何かをする一歩を踏み出したのです。

第4使徒シャムシエル

第4使徒シャムシエル(「」の第5使徒に該当)は、一撃で兵装ビルを寸断する威力がある触手を持ち、それで初号機の腹部を貫きますが、活動限界時間ギリギリのところでプログレッシブナイフでコアを破壊されます。

このエピソードでは、偶発的な事態からシンジが初号機のコクピットにクラスメートの鈴原トウジと相田ケンスケを搭乗させる事態となります。

心理的に追いつめられ、半狂乱とも言える状態になりながら初号機を操縦するシンジを見て、2人がシンジへの誤解を解いて親友になる契機が描かれています。

第6使徒ラミエル

第6使徒ラミエル(「」の第6使徒に該当)は攻守ともに鉄壁を誇り、初戦では初号機を中破させましたが、ミサト考案の「ヤシマ作製」のポジトロンスナイパーライフルによる長距離狙撃により撃破されます。

この作戦を通じて、シンジに対して無機質でしかなかったレイの対応が徐々に変わっていく様が描かれ、二人の距離は少し近くなったのでした。

第7使徒イスラフェル

初戦では二体分離して初号機、弐号機ともども海に頭から突き刺さして活動停止させ、エヴァはリツコに「 無様ね」と言われてしまいます。

そこでシンジとアスカは息の合った動きが出来るように特訓し、初号機と弐号機の同時攻撃で使徒を撃破します。近づいたかに見えた二人でしたが、戦いが終わるとすぐに口喧嘩を始めます。

しかし、シンジはそれまで「人の言うことを聞いている方が楽だから」と、人の言うなりだったのが、対等な人間関係に向けて第一歩を踏み出したのです。

喧嘩とは自分の主張を相手にぶつけることで起こるからです。

第8使徒サンダルフォン

弐号機により撃破されましたが、使徒を倒したもののマグマに沈みそうになり、「折角やったのに、やだな、ここまでなの」とアスカが諦めかけた瞬間、マグマの中を耐熱装備も付けないで初号機が救援に来るのです。

このときの「バカ、無理しちゃって」というのは、アスカの最大級の感謝の言葉だったのではないでしょうか。

それまで「親の七光り」とシンジを見下して(ことさらにそのような態度をとって)いたアスカにも変化が訪れるきっかけになりました。

第9使徒マトリエル

最弱の使徒」としての地位を確立している(?)第9使徒マトリエルは、三機のエヴァが協力して倒しました。

初号機が零号機からパレットライフルを受け取って撃つまでの間、マトリエルの強力な溶解液を受け止めて時間を稼ぐ役割を買って出たのはアスカでした。

アンタに借り(マグマから助けてもらった事)を作りたくないからよ」というのが表向の理由にせよ、自分一人いればいい、と言い放っていたアスカにも変化の兆しが現れたのです。

第10使徒サハクイエル

この使徒はエヴァ3機による共同撃破でした。報告を受けたゲンドウは、シンジに「よくやったな」と声を掛けます。

それまでは「人に言われたから」その生き方の惰性的な延長線上でエヴァに乗ってきたシンジは、「初めて父さんにほめてもらったんだ」と、エヴァに乗る意義を父親に認めてもらうことに見出し始めるのです。

第11使徒イロウル

エヴァ以外に撃破された唯一の使徒です。その過程で、リツコとマギシステムの開発者である赤木ナオコ博士との愛憎ないまじった関係が垣間見えるエピソードになっています。

また、「進化の終着地点は自滅、死、そのものだ」というゲンドウの言葉は人類補完計画の目的と重なるものであることが後で気づかされます。

第12使徒レリエル

父親に認めてもらおう、というシンジの気負いが第12使徒レリエル戦では裏目に出ます。引き際を逃し、使徒が展開する虚数空間初号機ごと飲み込まれてしまったのです。

エントリープラグの生命維持限界時間が迫る中、シンジは母親の幻影を見た気がしました。エヴァの暴走によって一命を取り留めたシンジは「ただ会いたかったんだもう一度」と言います。

その意志が初号機に伝わって暴走を引き起こした可能性を示すことで、エヴァの秘密に暗示が与えられます。

一方で初号機の暴走を目の当たりにしたアスカは、「私、こんなものに乗ってるの?」と言います。エヴァに乗ることが他者から承認されるすべである彼女にとって、この恐怖は暗い影を落とすことになります。

第13使徒バルディエル戦

シンジは友人を傷つけることを防げなかった事に耐えられずに自らエヴァから下りる決断をします。

第14使徒ゼルエル

  

しかし逆に第14使徒ゼルエルの侵攻ではアスカ、レイの無惨な敗北と加持リョウジの言葉から、再び自らエヴァに乗る決意をします。

この2体の使徒との戦闘を通じ、シンジは自らの判断で他人の運命を、生死を決めるということを求められるのです。

第15使徒レリエル

この回はアスカの内面が明らかにされていきます。強気な態度の影にあるトラウマともろさを衝かれてアスカの心は壊れていきます。

第16使徒アルミサエルと渚カヲル

使徒に侵入されたレイがそのことがきっかけで自分の心に気づいていきますが、その末に彼女は命を代償に使徒を道連れにすることになります。

しかしTV版最後の使徒である渚カヲル(第17使徒タブリス)との出会いは、シンジにさらなる過酷な決断を強いるのです。

カヲルは登場当初からシンジに好意を示し、シンジもそれに応えます。自分のことをこれほど認め、肯定し、受け入れてくれる人に出会ったことがないのですから。

それだけに、カヲルが使徒だと知った時にシンジは裏切られたという激しい怒りを覚えます。バルディエルの時のように、攻撃に逡巡することはありませんでした。

(それにしても、人間の大きさのカヲルにプログレナイフを突き立てるとは・・・)

それでも最後、カヲルの生殺与奪を文字通り握ったシンジのためらいの場面は、独白などで語られることなくベートーベンの「第九」の一節が流れ、この何秒かは、絵が全く動かないながらもこのアニメ屈指の名場面と言えるでしょう。

蛇足ながらカヲルの死の直前に流れていた一節は「億万の人々よ、ひざまずくか?」(Ihr stürzt nieder, Millionen?)という内容でした。

使徒」は単に倒すべき敵という役割だけを担っているのではありません。

倒す過程での他者との関わりによって、エヴァンゲリオンのパイロットを中心にした人間を変化させていく、そういう触媒的な役割も持っていると見ることができます。

世界の不思議」である使徒と「自分の不思議」は無関係ではないのです。

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